【eventreport】『WITHコロナ時代の産科施設のコミュニケーションについて考える~院内コミュニケーションと母子のケア~』
産経新聞社による「フェムケアプロジェクト」の一環として、女性のセルフマネジメントに役立つ情報を発信する「女性の健康推進協会」(以下ジョセケン)運営の元、看護職を対象としたオンライン講座『WITHコロナ時代の産科施設のコミュニケーションについて考える~院内コミュニケーションと母子のケア~』が2022年3月24日に実施されました。今回、イベントに参加した「メディケアナース」編集部がレポートをお届けします!
今回のオンライン講座は、コロナ禍におけるスタッフや患者とのコミュニケーション、今後の看護職の働き方についてをキーワードに二部構成で行われました。第一部では「ジョセケン」の代表理事を務める助産師・保健師の濵脇文子さんが登壇。医療現場の課題解決に向けたコミュニケーション方法や、シフト勤務でのよりよい情報共有のあり方、出産・子育てを控える妊婦や母親への支援策などを紹介。
第二部では、ビジネスチャットサービス「LINE WORKS」を手がける、ワークスモバイルジャパン株式会社のマーケティング部長・篠田麻実さんをゲスト講師に迎えて、仕事版LINE「LINE WORKS」の活用事例を参考に簡単なIT活用で実践出来る、助産師の働き方改善についてお話しされました。
今回の記事では「ジョセケン」濵脇さんがお話しされた内容についてご紹介します!
【講師 プロフィール】濵脇 文子
助産師、保健師。一般社団法人女性の健康推進協会代表理事。国立大学法人大阪大学大学院 医学系研究科 招聘准教授。国立保健医療科学院 専門課程II 地域保健福祉分野終了。星薬科大学非常勤講師。
一般社団法人女性の健康推進協会(ジョセケン)とは?
「一般社団法人女性の健康推進協会(ジョセケン)」とは、 2020年12月に助産師の活動ネットワークによる、 女性の健康増進を目的とし設立された団体です。「ジョセケン」は、医療と保健の専門家である助産師が、妊娠・出産・子育て支援のみならず、女性の生涯の健康の支援者として、女性の今に常に寄り添います。 HP
コロナ禍において産科領域で起こっていること
新型コロナウイルスの感染拡大に対し、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出してから2年が経過しました。コロナ禍において、産科領域では大小はありながらも当時とはまた違う問題も出てきていると濵脇さんは話します。
まず始めに、コロナ禍において産科領域で起こっていることについて
「母子間において施設内では、クラスターを発生させない為に多大な感染予防対策が行われていると思います。それと共に実際に罹患した方の対応をしながら感染を広げないって言うことが大切ですよね。現場では、ダブルスタンダードでそれが行われている訳です。」
と、濵脇さん。
産科医療では直接ケアを行う機会が多く、母子間は勿論、医療者も指導など接触を伴うケアが行われてきました。しかし、コロナ禍によって接触を極力回避する必要が出てきた為に、現場の仕様変更が度々行われることになるのです。
妊娠という新しい身体の変化に対して、不安が大きい時期に感染に対する不安も大きくのしかかる。濵脇さんは、全国各地の医療現場で入念な感染対策は行われていますが、それでも「忘れてはいけない大切なこと」もあると話します。
「母子の命を守る為、社会や医療の世界においては感染を起こさせない大前提はありますが、過剰な介入になってしまい、母子が今まで当たり前に享受していた権利を不必要に阻害してしまっていないかなどの視点も大切だと思います。」
院内コミュニケーション〜課題を共有し軽減できる組織づくりとコミュニケーション〜
社会が大きく変化する昨今、医療者同士のコミュニケーションについて改めて振り返る時なのかもしれません。日々、様々な問題が起きている医療現場では、組織間のコミュニケーションに大切なことが三つあるのだそう。
①情報共有
課題に対する取り組み方は、一人の経験や知識だけでは限られてしまいます。情報共有によって知識やリソースの補間を行いましょう。
②リスクヘッジ
問題が発生した時にはそのリスクについて話し合いを行う必要があります。起こりうるリスクの程度を予測して、リスクに対応できる体制を整えておく「リスクヘッジ」と、分からないことが起こった際に意見の食い違いや、共通認識の違いが無いよう組織として共通認識を持つことが大切です。
③リーダシップとメンバーシップ
緊急事態には指揮系統が大切です。ですが、何が正しいのか不明確な状況の場合、色々な方針を備える必要があり、リーダーシップだけでは成り立たないことがあります。
指示を守れば良いのではなく、現場で起きていることを指示と擦り合わせ、現場の現状と合っているのか、一刻と判断してそれをフィードバックしていきます。それが自分自身のリーダーシップをとることにも繋がるのです。
円滑なコミュニケーションによって初めて成立する医療現場。多職種のひとが携わっている業界だからこそ一人ひとりの意識が欠かせません。また、そうした医療現場で頑張っている方々に対して、特に大切にして欲しいことについて
「人のケアをするケアワーカーは自分自身のケアも大切です。自分が“良い状態”じゃないと人のケアは難しいかもしれません。深呼吸をしたり、少しの時間でも良いので自分の心を見つめ直すような時間が持てると良いな…と思っています。」
濵脇さんはこのように語りました。
コロナ禍中の母子のケア事例
①Instagramを活用した支援
産前教育などの接触によるサポートが難しく、昨今は母子のメンタルヘルスにおける問題も多いのだそう。
母子と家族向けケア教室などの“リアル開催”が難しい昨今、濵脇さんは「ジョセケン」Instagramアカウントを活用し、インスタライブを開催したのだそう。実際に赤ちゃんのお風呂の入れ方や、情報を発信することで気付きもあったそうで
「テクノロジーによって一方的にアドバイスするだけじゃなく、視聴されている方からコメントを貰うことで双方向の展開が出来たり、情報交換も行われて繋がりが生まれました。自由な参加形態という面も良いところです。良い時代になったなぁ…と思いましたね。」
と、振り返ります。
対面で言葉を交わすコミュニケーションの良さもありますが、母子を含めた家族が気軽に参加でき、コメント形式による質問のハードルも下がる長所も今の時代に合っているのかもしれません。
②里帰り出産、里帰らない出産
日本には「里帰り出産」という、出産前〜産後までの一定期間、実家に帰省して近くの産婦人科で出産する文化があります。
新型コロナによる、緊急事態宣言が発令されていた時期には「里帰り出産」は難しい状況でした。そこで、濵脇さんが事例に紹介されたのは『東京里帰らない人応援プロジェクト』という取り組み。「里帰り出産」が出来ず、困っている人たちをアウトリーチ型で支援するプロジェクトです。
また、コロナ禍中に「変わって良かった」と感じる側面もあったのだそう。実際に体験したエピソードとして
「とある経産婦さんは『面会制限してもらって良かった〜!』と安心されている方もいました。産後って休みたくてもお祝い事だから色々な人が面会に来てくれることが多いこともありますしね。
他には、オンライン面会もこれまで簡単に会うことが出来なかった遠方の親族の方と繋がる事が出来たり。この時代に合う、新しい産後文化や子育てを社会化していく推進にもなったんじゃないかなと思います。」
と、お話頂きました。
まとめ
濵脇さんは最後に
「痛みを伴うような出来事によって、今まで何となくやってきたことの問題点が露呈したこともあると思います。お母さんと社会、医療と家族を繋ぐハブとして専門家の私達が出来る事は沢山あるなと感じています。
経験したことがない出来事に、専門家であっても判断に迷うことは多くあると思います。そういった時に専門家同士もコミュニティなどを通して繋がっているということは今後、大切かもしれません。」
と、お話しされました。
今回「メディケアナース」編集部が参加したオンライン講座『WITHコロナ時代の産科施設のコミュニケーションについて考える~院内コミュニケーションと母子のケア~』では、産科領域に携わっていない看護師にも共通する大切な事が多く語られていました。
濵脇さんが仰る通り、まずは“自分自身のケア”も大切にすることから「メディケアナース 」読者の皆さまにとって、医療現場のコミュニケーションについて改めて振り返るきっかけになりますと幸いです。
イベント概要
WITHコロナ時代の産科施設のコミュニケーションについて考える~院内コミュニケーションと母子のケア~
主催:フェムケア プロジェクト
協賛:ワークスモバイルジャパン株式会社
運営:一般社団法人女性の健康推進協会
【主催】フェムケアプロジェクト
産経新聞社が発行するフリーマガジン「metropolitana(メトロポリターナ)」は、女性のコ コロとカラダのケアを起点に、よりよい未来につなげる「Fem Care Project (フェムケア プロジェクト)」を立ち上げました。 女性特有の健康課題への対処法から働きやすい社会の実現へ向けて、専門家や企業と ともに考え情報を発信をしています。
【協賛】ワークスモバイルジャパン
私たちはお客様に、仕事/はたらくというシーンのコミュニケーションに おいて、ITが活用しにくい企業・職場・地域の人にとって、仕事でも使える( 仕事用なのに使いやすい )+ 誰でも使える( ITスキルを問わない) サービスを提供し続けます。
【運営】一般社団法人女性の健康推進協会